『霞ヶ浦の帆引船・帆引網漁法の保存活動』

第43回サントリー地域文化賞】受賞しました!!!

 

サントリー地域文化賞とは・・・

=地域文化の発展に貢献した個人または団体を表彰  

全国各地で展開されている芸術、文学、伝統の保存・継承、衣食住での文化創出、環境美化、国際交流などの活動を通じて、地域の文化向上と活性化に貢献した個人、団体に、毎年「サントリー地域文化賞」が贈呈されます。 原則として全国から毎年5件の活動が選定されますが、今年はその一つとして、かすみがうら市・土浦市・行方市が実施する『霞ヶ浦の帆引船・帆引網漁法の保存活動』が選定されました。

詳しくはこちらから⇒https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/

受賞理由

霞ヶ浦のシンボル「帆引船・帆引網漁法」を保存・伝承するため、3つの保存会が中心となって、観光船の運航、後継者育成、フォトコンテスト等のPR活動、船や漁具の調査・記録など幅広い活動を行っている点が高く評価された。

 

◎活動概要

帆引網漁法は、明治時代、霞ヶ浦湖岸の坂村(現かすみがうら市)の住民によって発明された。帆桁と漁網を綱で直結し、帆が受ける風力と漁網にかかる水圧および船の自重でバランスをとりながら航行して漁をする世界にも類を見ない漁法である。風力を利用して人数で操業できることから地元漁師の間に広く浸透し、霞ヶ浦のワカサギ漁・シラウオ漁が発展する重要なきっかけとなった。最盛期には900艘を超える帆引船が操業していたと言われており、風をはらんだ大きな帆がいくつも湖面に並ぶ様子は、明治から昭和にかけて霞ヶ浦を代表する風景だった。

1960年代後半、エンジンを積んだトロール船の台頭によって帆引船は姿を消したが、1970年代には慣れ親しんだ風景の消失を惜しむ声に応えて観光帆引船として復活。毎年夏から初冬にかけて行われる観光帆引船の定期操業は霞ヶ浦の風物詩として地域住民に広く愛されており、その美しい姿と風景は筑波山と並ぶ地域のシンボルとなっている。

現在、「霞ヶ浦帆引き船・帆引き網漁法保存会」(かすみがうら市)、「土浦帆曳船保存会」(土浦市)、「行方帆引き船保存会」(行方市)が中心となって保存活動が行われており、観光帆引船の操業もこの3つの保存会が行っている。風向きや風力の変化に対する瞬時の対応など、帆引船の操業には高度な技術が求められることから、各保存会では長年にわたって、操船技術に関するマニュアルを作成するなど後継者育成・技術伝承に積極的に取り組んでいる。

また、帆引船の特長である優雅な姿を活かしたPR活動も盛んに行われている。「霞ヶ浦帆引き船フォトコンテスト」は、毎年県内外から多数の応募作品が集まる名物コンテストで、開催回数は2021年で20回を数える。実物と同じ赤杉材を使って精巧に再現された「霞ヶ浦帆引き船模型」は、茨城県郷土工芸品に指定されており、模型船を組み立てる工作教室の参加者は地域の子供たちを中心に1500人以上にのぼる。

近年は、学術的な記録・調査への取り組みも進んでいる。2018年に「霞ヶ浦の帆引網漁の技術」が国選択無形民俗文化財に選ばれたことを受け、かすみがうら市、土浦市、行方市の三市による調査委員会が立ち上がった。現在、学識経験者や各保存会の会長らが委員となって、帆引網漁に関する一連の技術を記録するとともに、そのメカニズムやモノ・人・知識などに関する調査を進めている。霞ヶ浦で生まれ、長く地域住民に愛されてきた帆引船・帆引網漁法が、3つの保存会を中心に展開されている積極的な保存・伝承活動によって、今後も末永く霞ヶ浦のシンボルとして愛され続けることを期待したい。

 

本日(令和3年9月7日)茨城県庁にて記者会が行われました。

【左】行方市帆引き船保存会:鈴木会長(行方市長)

【中央】土浦帆曳船保存会:古仁所会長

【右】霞ヶ浦帆引き船・帆引き網漁法保存会:戸田会長